110mハードル走のアプローチ7ステップの有効性の理由とは?

専門用語について

110mハードル走のアプローチにおける「7ステップ」は有効か?

今回は、110mハードル走における、面白い実験結果があったのでご紹介したいと思います。

 

  • アプローチの歩数は「7ステップ」と「8ステップ」のどちらが有利なのか

という最新のスポーツ論文に基づくものです。

 

しかしその前に、この話を読みとくために知っておかなければならない専門用語を、いくつか解説しておきましょう。

 

アプローチとは?

アプローチとは、スタート地点から1台目のハードルまでの走りのことをいいます。

 

ハードルとハードルの間では全ての選手がわずかに減速するため、アプローチでタイムを稼いでおくと有利になります。

 

ステップとは?

ステップとは、いわゆる「歩数」のことです。

 

今回はアプローチにおいて「7ステップ(7歩)」が有利なのか、「8ステップ(8歩)」が有利なのかという検証をしていきます。

 

インターバルとは?

インターバルとは、ハードルとハードルの間の距離・走りのことをいいます。

 

ハードル走では、アプローチを走り終えたら間髪入れずにインターバルを走るということになります。

 

これまでの主流は「8ステップ」だった

さて、ここからは本題に入っていきたいと思います。

 

110mハードル走のアプローチにおいて、

  • 「7ステップ」と「8ステップ」のどちらが有利に働くのか

という検証です。

 

経験者ならご存知だと思いますが、これまで日本の陸上界では8ステップが主流でした。

 

110mハードル走(女子は100m)の場合、アプローチは男子13.72m、女子13.00mなので、この距離を8ステップで走り切ってしまうわけです。

 

13m以上の距離をたった8ステップで走ることは、初心者にとっての大きな関門のひとつとなります。

 

しかし近年、世界のトップ選手のなかにはわずか7ステップでアプローチを終える選手が増えてきました。

 

  • 2008年に当時の世界記録である12秒87を記録したダイロン・ロブレス選手
  • そして現在の世界記録である12秒80を記録したアリエス・メリット選手

世界で最も速く110mハードル走を走りきるこの2大選手は、いずれも7ステップで世界記録を樹立しています。

 

このことから、日本でも110mハードル走においての7ステップの有効性が研究されるようになってきました。

 

これまでは8ステップが主流でしたが、このまま行けば我が国でも7ステップが主流となる日がくることでしょう。

 

言うほど簡単に修得できる技術ではありませんが、早めに知っておいて損はないはずです。

 

 

検証:7ステップは日本人にも適用できるのか

初めて7ステップの話を聞いたとき、「日本人には無理だろう」と考えた方もいらっしゃることでしょう。

 

7ステップを使って世界記録を樹立したアリエス・メリット選手、そしてダイロン・ロブレス選手は2人ともアフリカ系外国人…

 

写真を見れば一目でわかるほど、足の長さが平均的な日本人とはケタ違いなのです。

 

言うまでもないことですが、アフリカ系外国人は、陸上競技において天賦の才を持っています。

 

アフリカ系外国人は長い足と優れた筋力、それに圧倒的な運動能力を生まれ持っているため、少しの練習でも7ステップをものにしてしまうのです。

 

世界で活躍できるレベルまで押し上げるのが簡単とは言いませんが、少なくとも我々日本人よりは圧倒的に有利だといえるでしょう。

 

結論からいえば、日本人のポテンシャルで7ステップを実用化するのは簡単ではありません。

 

しかし7ステップの修得は日本人でも不可能ではありませんし、実際に使えれば8ステップを超える記録を出る可能性があることも、すでに検証済みです。

 

 

今までの常識を覆す

ごく最近、国内の一流ハードル走者4名に「7ステップ」で110mを走らせる実験が行われました。

 

結果として、
アプローチ局面では8ステップの選手が有利だったにも関わらず、5台目のハードルを超えるまでには7ステップのほうが短いタイムをたたき出せる
ということが判明したのです。

 

この結果は「全ての選手はインターバルで減速するため、アプローチで差をつけた選手が有利」という、今までの常識を覆しうるものです。

 

実験に参加した国内一流選手でも、7ステップを完全にマスターしたわけではありませんが、このレベルの選手なら練習しだいで7ステップをものにできるでしょう。

 

110mハードル走における7ステップの研究は、まだまだ始まったばかりです。

 

しかし研究と普及が進めば、日本人選手が7ステップで世界の選手と戦う日も、そう遠くはないかもしれません。

 


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